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近代の日本文学-三月の第四日曜-

「日本文学100年の名作 第3巻 三月の第四日曜」 池内紀・川本三郎・松田哲夫編

1934年から1943年に発表された、様々な作家の短編が13編収録されています。
どれも面白かったです。

「仇討禁止令」 菊池寛
佐幕派と勤王派で二つに分かれた高松藩。
勤王派の新一郎は、佐幕派の成田を討つことになった。しかし、新一郎は成田家と親しく、成田の娘は新一郎の許嫁であった……。

切ない話でした。

「厚物咲」 中山義秀
瀬谷は片野とは、長い付き合いだった。
瀬谷は片野から借りた金を毎月1円ずつ返していたが、とっくに借金は返し終わったはずなのに、片野は毎月やってくる。

片野の妻の最期、片野の最期が、どちらも壮絶すぎて、ショッキングでした。
見た目がグロテスクというわけではなく、どちらも信念を貫いたうえでの死。間違った信念のように思えますが……。
この作品は芥川賞を受賞したそうですが、芥川賞にふさわしい重厚な作品でした。

「夫婦」 中島敦
パラオのギラ・コシサンとその妻エビルの話。
エビルは、浮気者で嫉妬深い。コシサンはエビルに頭が上がらなかったが……。

中島敦は真面目な話を書くイメージがあったのですが、この話は少し笑えるハッピーエンドの話でした。
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オズの国で起きた殺人事件-ドロシイ殺し-

「ドロシイ殺し」 小林泰三

蜥蜴のビルは、砂漠で倒れていたところをドロシイ、ブリキの樵、案山子、ライオンに助けられる。
やがて、オズの国の宮殿で殺人が起こる……。

「アリス殺し」シリーズの長編第三作です。

今回の舞台は、オズの魔法使いの世界。
相変わらず少しグロテスクです。

殺人事件の犯人よりも、それ以外の人が怖かったです。
ビルのとぼけた発言が癒しでした。

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純文学系の青春小説

最近、純文学系の青春小説を数冊読んで、構造を見つけたので、まとめておきます。

始まり
・クラスに転校生がやってくる
・転校生が主人公のこともあれば、クラスの一人が主人公のこともある

・主人公は家庭に問題抱えがち
・プールの授業ありがち
・”光”についての描写ありがち
・クラスで”いじめ”と呼ばれる犯罪行為起こりがち
・大人はほとんど頼りにならない
・ある出来事により、主人公は学校を休む

終わり
・主人公は試練を乗り越えたり、乗り越えなかったりするが、乗り越えない場合のほうが多い

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隠された財宝と謎の美女-幽霊塔-

「幽霊塔」 江戸川乱歩 カラー口絵 宮崎駿

冒頭に宮崎さんの漫画が16ページ載っています。
ウィリアムスンの本から黒岩涙香の作品ができ、それが江戸川乱歩に影響を与えてこの「幽霊塔」ができ、更にそれが宮崎駿に影響を与え……とずっとつながっているというのが、感動的でした。
宮崎さんの漫画だけでも、一読の価値ありです。

さて、江戸川乱歩の「幽霊塔」について言えば、文句なしに面白かったです。

殺人事件が起きた屋敷、隠された財宝、謎の美女……次々に事件が起こり、息つく暇もありませんでした。
幽霊塔内部のからくりが、楽しかったです。
ラストがハッピーエンドで爽やかでした。

主人公の恋敵である黒川弁護士ですが、主人公視点では嫌な人でも、実はすごく活躍していたなと思いました。黒川弁護士に幸あれ……。

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子どもたちの何気ない日常-真夜中のパーティー-

「真夜中のパーティー」 フィリパ・ピアス

子どもたちの何気ない日常やちょっとした出来事を描いた短篇集です。
楽しい話もあれば、切ない話もありました。

「真夜中のパーティー」
ハエのせいで夜中に起きてしまったチャーリーが、両親には秘密で兄弟姉妹と一緒にポテトケーキを食べる話。
楽しそうでいいなぁ。

「牧場のニレの木」
ニレの木を伐採することになって、リッキーは同じ学校の子供たちと木を見に行く。
そのことをきっかけにリッキーは友達を作ることができて、幸せにはなったのですが、
ニレの木がなくなったことは寂しくて、少し泣いてしまうのが切ない。

「ふたりのジム」
おじいさんのジムと孫のジムが、ちょっとしたお出かけをする話。
祖父と孫の素敵な関係。

「アヒルもぐり」
水泳の練習中、主人公の少年はコーチが池に投げたレンガをもぐって取りに行く。
主人公が取ってきたのはレンガではなく、ブリキの箱だった。
そのことが少年に勇気を与えた。
あー、なんかわかる、という感じ。レンガより嬉しい特別感。少年が頑張った証。

タグ:児童文学
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失踪した彼はどこに?-Ψの悲劇-

「Ψの悲劇」 森博嗣

元大学教授、八田洋久が失踪した。
一年後、八田の知り合いが屋敷に集まるが、その夜殺人事件が起こる。

Gシリーズ後期三部作の第二弾です。
面白かったです。SFミステリーでした。

語り手は八田家の執事ですが、実は彼は……というところが良かったです。

島田文子さんが登場します。

ラストは、少しぞっとしました。


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出会いがあり、別れがあり-ダマシ×ダマシ-

「ダマシ×ダマシ」 森博嗣

小川令子は、結婚詐欺にあったらしい女性から相手の男性を探す依頼を受けた。
やがて、その男性が殺害される……。

Xシリーズの第六巻で、これでXシリーズは完結です。

今回の事件は、犯人も謎解きもすっきりしていました。

登場人物が結婚したり、別れがあったり、シリーズ最終巻らしい話でした。

最後に依頼人の正体がわかり、びっくりしました。
性格、変わりすぎじゃないですか?
それまでにいろいろあったんでしょうね……。
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勇気をもらえる本-トム・ゴードンに恋した少女-

「トム・ゴードンに恋した少女」 スティーヴン・キング

9歳の少女トリシアは、母親、兄と一緒にピクニックに出かけた。
トイレに行きたくなって少し道をはずれたことをきっかけに、深い森の中で迷子になってしまう。
怪我をして、虫に刺され、病気になりながらも、トリシアは必死に前に進む。

とても面白くて、スリリングで、勇気をもらえる本でした。
ホラーではなく、サバイバル小説です。

トリシアがとにかく悲惨で、応援せずにはいられません。

トリシアは、レッドソックスのトム・ゴードンの大ファンで、ラジオでレッドソックスの試合を聞くことを心の支えにして、どうにか前に進んでいきます。
いわゆる”推し”ですね。
会ったことのない人でも、歴史上の人物でも、想像上の人物でも、尊敬する憧れの人がいると、生きていく力になるんだなぁ。

トム・ゴードン以外にも父親、母親、友達など身近な人がトリシアに言ったことが、トリシアの助けになります。

トリシアが、無事に帰れたら自分だけの言い回しをいくつか作ることにしよう、と呟くシーンが好きです。

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過酷な探索行-銀のいす-

「銀のいす」 C・S・ルイス

ユースチスとジルは、ナルニア国で行方不明の王子を探す。

ナルニア国シリーズの四作目です。

アスランに言われて王子を探すことになった二人ですが、最初からアスラン言われたことを守れずに過酷な旅をすることになります。

旅の相棒は、沼人の泥足にがえもん。すごい名前……。
周りが暗くなるようなことばかり言う人ですが、良い人。

魔女との戦いのシーンは、すごくドキドキしました。
何度も操られそうになりながら、必死の抵抗。
泥足にがえもんが、かっこよかったです。

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身近なところに科学はあふれている-科学と科学者のはなし-

「科学と科学者のはなし 寺田寅彦エッセイ集」 池内了編

物理学者、寺田寅彦のエッセイ集です。

日常の出来事の中にも、科学のタネがたくさんあるんだよ、ということがわかる本でした。

「夏目漱石先生の追憶」は、夏目漱石好きの方は必読です。
浅草のルナパークでメリーゴーラウンドに乗っている夏目漱石の姿を想像すると、ニヤニヤが止まらない。
夏目漱石の没後、「先生が文豪にならなかったら、もっと長生きしたのかも」と嘆くところでは、切なくなりました。

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